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最高裁判所第一小法廷 昭和42年(オ)1461号 判決 1969年4月24日

主文

本件上告を棄却する。

上告費用は上告人の負担とする。

理由

上告代理人小野原肇の上告理由第一点について。

原審の確定するところによれば、被上告人銀行と訴外光進産業株式会社間の当座取引約定書には原判示の記載がなされており、被上告人は当座取引の執務において右約定書記載と同趣旨の取扱をしていた事実が認められるところ、訴外会社の昭和三五年五月九日における当座預金口座残高は七六、七九〇円にすぎなかつたにかかわらず、被上告人は、原判示の経緯による訴外会社の依頼により、翌一〇日、同会社振出の金額約七〇〇万円の手形について同会社のため不渡処分を免れさせるため、やむなく訴外会社に対し原判示の金員を融資して、銀行の閉店時刻でありかつ手形交換所に不渡返却をする最終時刻である同日午後三時まで不渡返却をしないで訴外会社からの入金を待つたが、同会社は、被上告人の督促にもかかわらず、前記融資を受けた金員の一部を入金したのみで、残余の約三七〇万円については、被上告人からの再三の督促の結果、漸く同日午後五時頃にいたり、本件小切手を含む金額計三、〇四一、二〇〇円の小切手等を被上告人に交付し被上告人は右小切手等を受入れて訴外会社の当座預金口座に入金手続をしたというのであつて、原審の前記認定は、挙示の証拠により、これを是認することができる。右の事実によれば、被上告人は、訴外会社に前記手形の不渡処分を免れさせるため同会社に前記金員を貸付けて手形の決済をなし、右貸金債権を担保するため訴外会社から本件小切手上の権利の譲渡を受けたものと解するのが相当であるから、被上告人が上告人に対し本件小切手上の権利を行使しうるとした原審の判断は、結論において正当である。所論は、原審の専権に属する証拠の取捨判断、事実の認定を非難し、右認定にそわない事実を前提として原判決を非難するに帰するものであつて、原判決の前記結論になんら影響を及ぼすものではないから、採用することができない。

同第二点について。

所論の点に関する原審の認定は、挙示の証拠により、これを是認することができる。所論は、原審の右認定を非難するに帰し、採用することができない。

よつて、民訴法四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員の一致で主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 岩田 誠 裁判官 入江俊郎 裁判官 長部謹吾 裁判官 松田二郎 裁判官 大隅健一郎)

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